バラエティ/トーク番組の例として、テレビもYouTubeも経験している自分から見た編集の流れを比較してみたいと思います。
※あくまで編集に軸を当てるため企画構成などは省かせて頂きます。あと説明のため極端な一例です!
目次
テレビ番組の場合
1.オフライン編集(作業者:AD、ディレクター)
ADさんが収録データを整理してプロジェクトに取り込み、
ディレクターがカット編集、カメラ割り(複数台のカメラの切り替え)、簡単なテロップ入れや演出指示などを入れて動画にします。
編集ソフトはだいたいAdobe Premiere Proが今メインです。
企業によりAvid Media Composer、Apple Final Cut Proなどの指定も…
使用バージョンも編集スタジオに合わせて「CC2019までしか対応していない」ということもあるため、古いバージョンも保存しておくのが吉。
2.オンライン編集(ポスプロのエディター、テロッパー)
その動画をテレビクオリティにするのがオンライン編集。
ポスプロ(編集スタジオ)のエディター/エンジニアさんがディレクターの指示を受け複数台のカメラの色調整(カラコレ)、文字や全体のエフェクトを付けます。
使用するのはAdobe Premiere ProやAvid Media Composer、Davinci Resolveなど…
古いシステムの場合HDCAM(業務用のビデオテープ)を複数用いて編集卓にプログラムしていき、最終的なテープに書き込んでいくことも…
TIPS:ソフトなど使うデジタルな編集をノンリニア編集。テープを使うものはリニア編集ともいいます。リニア編集のメリットとしては部分的な直しが必要になった時に、該当箇所だけ上塗りすればOKな点。そのスピーディーさもあり報道番組では現役です。
同時にテロッパーさんがフォントや色、エフェクトを駆使してテレビ番組らしいきらびやかなテロップを作ります。
使用ソフトはDEKO、Adobe Photoshop、Karismaなど。
3.MA(ポスプロのミキサー、音響効果)
映像だけテレビ番組らしくなり最後に音をまとめるのがMAという作業。
音響効果(音効)さんがそれぞれのシーンに合わせたBGM、効果音(SE)を付けていきます。長さが足りなければハマるように編集したり音の加工も。
そしてマイクの音声データ、音効のデータを一つに合わせて整音(Mix)するのがミキサーの作業。
小さい人の声を大きくしたり、BGM/SEとのバランスを取ったり…場合によっては言葉をツギハギにすることも…
テレビの場合ラウドネス(聴感上の音量感の数値)の規定が-24lkfsと決まっています。そのレベルに合わせるのもMAの役割。
そんな音データのMIXをXDCAMの映像データに上書き。
使用ソフトはほぼみなさんAvid Pro Tools。業界標準だとデータのやり取りで他の人にバトンタッチしやすいのがいいですね。
TIPS:テレビの場合基本的にJASRACとの原盤の包括契約を行っているため著作権管理されたBGMも自由に使用できます。しかしYouTubeの場合はJASRAC等と包括契約してる範囲が歌唱演奏までの権利のため、著作者の許諾なく使用するには基本フリー音源を使用します。知ってる音効さん達が使うサービスとしてはNASH、Audiostockが多いイメージ。他にも音源サービスとしてはArtlist、MotionElements、Envato Elements、Audiioなどがあります。
4.完パケ(ポスプロのエディター)
ポスプロのエディターに戻り、完成したデータを納品用の形式に落とします。
現在主流はXDCAMという専用ケースの中にDVDくらいのディスクが入ったもの(MDとかPSPのソフトのような感じ)。他にも4Kはデータが膨大なためSSD(SONY製が多い)で納品。地方など一部はHDCAM納品のことも。確認用にDVDやBDも欲しいということもあります。
…というフローチャートでした!
一例としてですが編集ではAD、ディレクター、エディター、テロッパー、ミキサー、音効と出てきました。これだけの専門職の人が絡むがゆえに制作費も数十万〜数百万と膨大になるんですよね。
YouTube動画の場合
基本的に同じで映像編集し、テロップつけて、音をいじって、BGM/SEをつけますが……
全部一人で完結します。
なんなら企画や撮影も含め一人です。
使用ソフトはAdobe Premiere Proが多いです。人によってはテロップなんかはPhotoshopを使うことも。
効果音やBGM素材なんかは人気YouTuberも愛用している無料で商用利用できる効果音ラボ、効果音辞典、DOVA-SYNDROME、YouTube Music Libralyなど豊富な選択肢。
これだけのことを一人でするため技術的、センス的にいまいちなこともよくありますが、作り方のHowTo動画もありかなりレベルが高いものもあります。
そしてテレビ経験のあるディレクターが近年はよくYouTube動画も作っていたりするので垣根はさらに曖昧に…
テレビほど人件費がかからないのと、そこそこのクオリティでOKとなることも多いので制作費は安くなり数千円〜数十万などということになってます。
ということでここまでをまとめるとこんな図です。
もともとマルチでできる人もいたし、番組の制作会社にYouTube動画の依頼がくるようになっています。(自分もその一人ですが)
こう比較するとすごい差ですが視聴者が見るのは完成した動画のみ!
適度に質よく手早く完成させられるマルチな編集者がどちらにも需要があり続けることになりそうです。